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オランダにおけるワーク・ファミリー・バランス(25) 善積京子教授論文抜粋

オランダにおけるワーク・ファミリー・バランス(25)
善積京子教授論文抜粋

追手門学院大学・地域創造学部紀要4号
「オランダにおけるワーク・ファミリー・バランス」
2019年3月10日

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オランダの雇用問題
オランダでは、パートタイム労働者は正社員であり、ただ週35 時間以上働くフルタイム労働者よりも労働時間が短いだけであり、賃金・残業手当・ボーナス・企業年金・福利厚生・職場訓練の機会など処遇での差を設けてはならないとされている。労働者には労働時間を短縮あるいは延長する権利も認められ、ライフ・ステージの変化に応じて、仕事と家庭生活のウエイトを調整しながら、労働市場に継続して参加することが容易になっている。一方、雇用調整弁として位置づけられているのが、有期雇用契約・派遣・呼び出しなどのフレックス労働である。このフレックス労働は使用者側からすると非常に便利な雇用形態であり、近年増加の一途を辿り、雇用者全体の3 割を占めるようになってきている。しかしその身分は不安定で、非常に弱い立場にある。2009 年の不況の時には、余剰人員としてフレックス労働者が最初に解雇された。前述した「雇用の柔軟性と保障法」や「雇用と保障法」で、労働者の権利保護が目指されているが、まだまだ不十分である。

フレックス労働者の中には、自発的な選択でなく、余儀なくその仕事に就いている人も少なくない。派遣労働者や有期契約の労働者が無期契約の正規雇用に移行するのは容易なことではない。正規・無期労働者の労働時間における柔軟性、仕事と家庭の調和を可能にしているのは、こうしたフレックス労働者の存在なのである。

子育て観とワーク・ファミリー・バランス現在でも、女性の就業率は上昇しているが、パートタイムでの就労が圧倒的に多い。「コンビネーション・シナリオ」の実態をみると、夫婦ともにパートタイムという組み合わせの世帯は6%に過ぎない。カップルの両方がフルタイム就労している人も少なく、その割合は1990 年代から変化せず、2011 年でも13.3% に留まっている。多くは妻=パート、夫=フルタイムの世帯である(中谷文美2015)。

オランダでは、「子育ては女性が行うもの」という意識は根強く残っているが、しかし0 歳児のいる女性の就労率はスウェーデンに比較すると非常に高い。それは、ほとんどの職場で育児休業が無給扱いであるためである。産後休暇終了後は育児休業を完全に取得することなく、家計補助のために、多くの女性はパートタイムで働いている。一方オランダでは、公的保育所週5 日利用している親が少ない。「家庭保育を良し」とする社会通念が公的保育所の整備・普及を遅らせ、保育所の利用料金は高く、公的保育施設の利用を抑制させ、祖父母や親族などによるプライベートな保育が活用されている。近年の保育手当金の規制強化と減額によって、そのプライベート保育の傾向は強まっている。このようにオランダでは「家庭保育を重視」する子育て観が根底にあり、仕事と家庭生活のバランスを取るために、女性ではパートタイム雇用を選択することが多い。その背後には、無給の育児休業制度や公的保育所利用料金の高さなどの経済的要因も絡んでいる。
                               つづく A子


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