オランダにおけるワーク・ファミリー・バランス(16)
善積京子教授論文抜粋
追手門学院大学・地域創造学部紀要4号「オランダにおけるワーク・ファミリー・バランス」
2019年3月10日
フレックス雇用の問題点
「雇用の柔軟性と保障法」(1999年)の法制化で、労働力の柔軟化を図る一方で、労働者の権利保護が目指されてきた。
しかしながら、現在でも派遣労働者は、非常に弱い立場に置かれている。
フレックス労働者は次の4つのグループに分類できる。
第1のグループは「学生」で、勉強しながら夕方や週末に小売店やコーヒーショップやレストランで働く。
第2のグループは、子どもや親の世話をしなければならない「女性」である。
その中で、シングルマザーにとってフレックス雇用は経済的余裕がない不安定なものである。
第3のグループは、正規の仕事を失い、新しい仕事を見つけることが困難な45~65歳の年配の人たちで、幾つかの短期の仕事を組み合わせで働いており、フレックス雇用での問題を抱えている。
第4グループは、定年退職した55~65歳層で、まだ活動的に働きたい、年金に上乗せした収入を得たいという理由から働いている。(Eurofound 2010)。
このようにフレックス雇用で働く人の背景・動機は異なっている。
フレックス雇用の形態が労働者にとっても適合している場合もあるが、もっと働き収入を得る必要のある人にとっては不満足な・強いられた就労形態といえる。
たとえば、労働者保険事情団が行った調査によると、派遣労働者が無期契約に移行できた割合は2割にも達していない(アルヤン・カイザー2011)。
3-3テレワークの普及状況と問題点
テレワークの普及状況
テレワーク導入割合は、企業規模が大きいほど多い。
2017年のCBS統計によると、従業員10~49人では74%であるが、50~250人規模では91%、250人規模では98%となっている。
産業別に導入率をみると、「情報通信」「学術研究、専門技術サービス」「金融保険」「不動産」「医療・福祉」では8割を越えているが、一方、「宿泊・飲食店」では5割ほどである。
さらに、従業員に占めるテレワーカーの割合を産業別に多い順から見ると、一番目は「情報通信」で6割を越えており、次は「学術研究、専門技術サービス」「不動産」「物品賃貸・他事業所向けサービス」「金融保険」の順で4割以上を占め、「医療・福祉」は3割ほどである。
反対に、最も少ない割合は「宿泊・飲食店」が1割ほどで、次に「卸売・小売り・修理」「製造業」が2割ほどである(権丈英子2018)。
テレワークのメリットとデメリット
テレワークの導入をめぐり、その功罪がこれまでにも議論されてきた(権丈英子2011)。
従業員側のメリットとして揚げられていることは、
①就労場所と時間の選択の自由度が高まるので、個人的な事情に合わせて働くことが容易になり、ワーク・ライフ・バランスが取りやすくなる、
②仕事を効率よく、集中して行なうことができる、
③職場までの通勤の負担を減らすことである。
一方、使用者側のメリットは、
①従業員を効率よく働かせることができる、
②従業員の病欠を減少させることができる、
③管理コストを節約できる、
ことである。
社会全体としても、
①交通渋滞の緩和に役立つ、
②通勤できない病気の労働者や障害者を社会的に再統合できる、
というメリットが考えられている。
一方、テレワークの導入のデメリットとして、
①仕事と個人の生活の区別が明確に区別することが難しくなり、労働時間が長くなり、過労状態を発生させやすい、
②自宅などでの作業が中心で、人と接触する機会が極めて少なくなり、社会的コンタクト量の減少で、孤独に陥る危険性が増す、
③直接対話の職場の組織や文化を変える、
などが指摘されている。
つづく A子
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