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オランダにおけるワーク・ファミリー・バランス(11)

オランダにおけるワーク・ファミリー・バランス(11) 善積京子教授論文抜粋

パートタイム雇用の待遇改善の法整備

 「ワッセナー合意」以降のパートタイム雇用者への待遇改善を背景にして、パートタイム雇用は普及していった。この改善は、当初は労使間での労働協約の中で定められていたが、1990年代になると、法整備が大幅に進行していく(権丈英子2018)。

パートタイム従業員も失業給付金を受給できるようになり、1993年には、政府が正規の週労働時間の3分の1以下の従業員を法定最低賃金の適用を外すことを定めた法令を廃止する。

1996年の「労働時間差別禁止法」(Wet onderscheid arbeidsduur)では、労働時間に長短による労働者の差別を禁止する「均等原則」が唱えられ、パートタイム労働者に、賃金・残業手当・ボーナス・企業年金・福利厚生・職場訓練の機会などで、フルタイム労働者と均等な待遇を受ける権利が与えられた。

さらに2000年の「労働時間調整法」(Wet aanpassing arbeidsduur)では、正規雇用労働者の労働時間の短縮や延長に関する労働者の権利が法文化され、特定の状況の下で時間当たりの賃金を維持したままで労働時間を短縮・延長する権利が従業員に認められた。

つまり、従業員10人以上の企業において、労働者がその企業に1年以上雇用され、過去2年間に労働時間の変更を求めたことがない場合に、労働時間を短縮・延長する権利をもつようになった。

労働者側は、使用者に4カ月前に書面で労働時間数変更を要求しなければならないが、変更理由を書く必要はない。使用者は、決定を下す前に労働者と協議し、1カ月前までに書面で、決定を回答しなければならない。使用者が時間短縮を拒否できるのは、

①代替要員の確保が困難である、
②安全性に問題が生じる、
③勤務時間の割り振りに重要な問題が発生する、

といった場合である。

また、労働時間の延長を拒否できるのは、

①定員上の問題、
②充分な業務量がない、
③予算上の問題

などの場合である(大和田敢太2009)。


 この労働時間調整法によって、パートタイム労働者はフルタイム労働者と対等な労働者として法的に保障され、パートタイム雇用が正規労働と位置づけけられるようになった。かくしてオランダでは、「労働時間の選択の自由」が保障され、ライフ・ステージの変化に応じて仕事と仕事以外の生活のウエイトを変えながら、労働市場に継続して参加することが容易になる。

そして2015年には「労働時間調整法」は「フレキシブル・ワーク法」(Wet Flexibel Werken)に改名され、従来の「労働時間の長さ」だけでなく、「働く時間帯」と「就業場所」の変更を申請する権利が認められた(権丈英子2018)。

フレキシブル・ワーク法案が提起された当初は、フレキシブル・ワーク規定が盛り込まれた団体労働協約(CAO)は16%、育児・介護義務など従業員の個人的環境が勤務スケジュールを組む際に考慮されることを保証する規定が盛り込まれていた労働協約は4%に過ぎなかったが、この法律はその状況を大きく変化させた(リクルートワークス研究所2018)。

キーワード:ワーク・ファミリー・バランス、オランダ、パートタイム雇用、フレックス労働者、労働法、育児休業制度、保育行政


         つづく A子



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