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オランダにおけるワーク・ファミリー・バランス(24) 善積京子教授論文抜粋

オランダにおけるワーク・ファミリー・バランス(24)
善積京子教授論文抜粋

追手門学院大学・地域創造学部紀要4号
「オランダにおけるワーク・ファミリー・バランス」
2019年3月10日

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考察
雇用政策の2 つの潮流

オランダの1980 年代以降の労働法制と労使合意には、大まかには2 つの潮流が存在する。1つ目の潮流は、正規・無期労働者の労働時間・場所における柔軟性(フレキシビリティ)である。それは、雇用の再配分よる失業対策という経済的視点からの「ワッセナー合意」(1982 年)、労働と家庭責任の調和というワーク・ファミリー・バランスの視点が加わった「パート勧告」(1994 年)や「コンビネーション・シナリオ」(1996 年)の答申、「テレワークに関する勧告」(2003 年)にみられる。法制上は、労働時間に長短による労働者の差別(つまりパート労働者への差別)を禁止する「労働時間差別禁止法」(1996 年)、正規雇用労働者の労働時間の短縮や延長を要求する労働者の権利を認める(つまりフルタイム労働からパートタイム労働へ、その逆も可)「労働時間調整法」(2000 年)で体現される。さらに、「フレキシブル・ワーク法」(2015 年)では、従来の「労働時間の長さ」だけでなく、「働く時間帯」と「就業場所」の変更申請の権利が認められる。

第2 の潮流は、企業の雇用の柔軟性とフレックス労働者の法的地位の改善(保障)を推進するフレキシキュリティの潮流である。これは、硬直的な解雇規制を緩和して、労働力の柔軟化を図るとともに、不安定である有期労働・呼び出し労働・派遣契約労働などのフレックスワークの法的地位を強化し、雇用の「柔軟性」と労働者の「保障」を同時に推進させ、労働市場での活性化と安定化を図るという流れである。それを体現しているのが「雇用の柔軟性と保障法」(1999年)で、①有期契約の回数と継続期間を規制する「拘束条項」、②派遣労働契約者の「26 週ルール」とよばれる保護規定、③呼び出し労働者への3 時間分の報酬保障、④労働契約や労働時間に関する法的推定規定、⑤契約解除と解雇規制、などが含まれている。

グローバル化や急速な技術革新の中、使用者側は次第に常用雇用を押さえ、フレックス雇用の採用を多くしている。労使は2013 年に「社会的合意」を結び、フレックス雇用から常用雇用への転換促進をねらい、先の「雇用の柔軟性と保障法」を「雇用と保障法」(2014 年)に改正し、常用雇用への転換までの期間を短縮する。

これらの潮流は、パートタイム労働者やフレックス労働者を増加させ、ワークシェアリングの拡大をもたらすと同時に、労働と家庭生活の調和に向けたワーク・ファミリ・バランス政策につながっていく。

つづく A子


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