オランダにおけるワーク・ファミリー・バランス(15)
善積京子教授論文抜粋
追手門学院大学・地域創造学部紀要4号「オランダにおけるワーク・ファミリー・バランス」
2019年3月10日
パートタイム雇用の課題
パートタイム従業員の労働時間に対する満足度をみると、ほとんどの従業員は現在の労働時間に満足している、と報告されている(アルヤン・カイザー2011)。
ただし例外的に、週24時間以下のパートタイムで働く男性では、「より長時間働きたい」が多くなっている。
一方、女性のフルタイムの層においては、可能ならば労働時間を「より短縮したい」との回答が多くなっている。
女性たちはパートタイム労働を選んだ理由(複数回答)では、「子育てのため」(38%)、「家事をしたいから」(21%)、「プライベートな時間が欲しいから」(17%)、「社交や趣味の時間が欲しいから」(13%)が挙げられ、「フルタイムの仕事につけなかったから」はわずか3%にすぎない。
このようにオランダでは、パートタイム労働に対する満足度は高く、フルタイムへの転換を希望しない場合が多い。
以上のように、パートタイム労働の正規化により、法的安定性が与えられ、特に女性が働き続けることを容易になったが、それでも問題が残されている。
パートタイム雇用がすべての面で正規化しているわけでなく、パートナー労働者の職務レベルは依然として下位が多くを占めている。
上位の職務レベルではフルタイム雇用が多く、また、パートタイム雇用では、労働時間の長い「大パート」(28時間~34時間)にほぼ限られている。
マクロ的視点からみると、労働時間の短い働き方では経済的自立は困難であり、社会の高齢化を補うことができそうでないことである。
少子高齢化やグローバル化の進行に伴い、人的資源の有効活動がますます必要とされ、長時間パートタイムを増やすことが重要な課題とされている。
3-2フレックス雇用の推移と問題
フレックス雇用の推移
前述したように、労働市場における柔軟性を高める方法として、有期雇用、呼び出し雇用(オンコール)、派遣労働者などのフレックス雇用の活用が進められている。
派遣業は、1960代には評判が悪かったが、1970年代に次第に必要性が認められる。
使用者から見ると派遣労働者は非常に柔軟に使うことができる「便利な雇用形態」であり、1980年前半には、労働市場での硬直化を解決する道具として積極的に評価されていく。
雇用者全体に占めるフレックス労働者の割合は、1992年には6.8%に過ぎなかったが、その後、増加の一途を辿り、2005年16.8%、2014年20.5%、2017年には27.2%にもなる。
雇用形態別にみると、フレックス労働者の中で最も多いのは「有期契約」(51.2%)である。
次に「呼び出し」(18.3%)、「派遣労働者」(15.9%)の順になっている。
男女比率でみると、「時間不定契約労働者」は男性が66.7%と多く、「呼び出し労働者」では女性が59.4%と多い。
年齢別割合を無期雇用されている「常用労働者」と比較すると、「フレックス労働者全体」では「15~24歳」の年齢層の割合が特に多く、「呼び出し労働者」では53.1%も占めている。
出身国別では、「オランダ生まれ」の割合が、「常用労働者」では81.9%で、「フレックス労働者全体」は76.0%で、やや少ない(CBS StatLine)。
つづく
A子
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