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オランダにおけるワーク・ファミリー・バランス(8)

善積京子教授論文抜粋
追手門学院大学・地域創造学部紀要4号「オランダにおけるワーク・ファミリー・バランス」2019年3月10日
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2-1団体交渉と政労使の組織

社会経済審議会(SER)と労働財団(STAR)

 前述したように、オランダでの労働市場の方向性は、使用者組織と労働組合の代表者が、政府の諮問機関を通じた協議・協力で決定つけられてきた。その政労使間の協議で中核的な役割を果たしてきたのが、社会経済審議会と労働財団である。

社会経済審議会は、政労使が参加して1950年に設立された。政府と国会の社会・経済政策の重要な政策に関する諮問機関である。この審議会は、国王(政府)によって任命された11名の委員、使用者団体により任命された11名の委員、労働団体により任命された11名の委員から構成される。創設当時は、政府と労使団体はどのような役割を果たすべきかの議論が中心であったが、現在では労働財団のアドバイス機能の大部分を受けもつ。1996年には、「コンビネーション・シナリオ」の答申も行なう(エーベルト・フェアフルプ2010)。

一方、労働財団は、労使の協力を目的とした私的法人団体であり、労使各10人の代表で構成されている。第1の重要な目的は、政府に対して社会経済に関わる政策についてのアドバイスを行うことである。たとえば、1996年には社会問題雇用大臣に対して「柔軟と保護に関する報告書」を提出する。それが土台となり、1999年に「柔軟性と保護に関する法律」が制定された。第2の目的は、中央労使合意形成である。つまり、様々なセクターの企業における労働条件の交渉過程に関して、中央レベルで調整する。その例として有名なのは、1982年のワッセナー合意(Wassenar agreement)と1993年のニュー・コース合意(New course agreement)で、ここが交渉の舞台になった。

この労働財団は、強制的な規制力はなく、「勧告」を発する以外の手段を持ち合わせていない。しかしながら実質的には、中央労使合意は財団傘下の労働組合や使用者の労働条件交渉過程に影響を与えている。政府は、労働財団の構成メンバーでなく、中央労使合意の形成に公式には何らの役割を果たしていないが、毎年秋に労働財団と協議する場を設けるなどして、合意に至る階に関与することで、政府の意向を反映させてきた。

以上のように、社会経済審議会と労働財団が、オランダの雇用・労働政策の方針協議において中核的な役割を果たしている。

キーワード:ワーク・ファミリー・バランス、オランダ、パートタイム雇用、フレックス労働者、労働法、育児休業制度、保育行政

つづく
A子

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