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オランダにおけるワーク・ファミリー・バランス(9)

善積京子教授論文抜粋
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2-2パートタイム雇用の正規化

オランダでは、パートタイム雇用は、もはや「特殊」な「非正規」の就労形態ではなく、「正規労働」と見なされ、賃金・雇用の安定・社会保障などの面でフルタイム雇用と均等な待遇を獲得している。この節では、パートタイム雇用の「正規化」への取り組みの歩みを辿る。

パートタイム雇用の始まり

オランダのパートタイム雇用は、1950年代に労働力不足を補うために、既婚女性向けに導入されたのが始まりであるが、当初は目立つ規模でなかった。1970年代になると、女性の社会的解放が進み、女性の教育レベルの向上で就業率は上昇し、結婚後も労働市場に残る女性が増えていく。政府も、労働力不足の解消および女性解放の促進の視点から、1973年には結婚・妊娠を理由にして女性を解雇することを禁止し、税制改正では妻の副収入の課税率を引き下げる措置を講じた。しかしながら、オランダでは「子どもは家で育てる」という規範が根強く、しかも、保育施設が不足していたことが影響し、女性の就業率増加の大部分はパートタイム雇用であった。その当時、政府は、パートタイム雇用を失業者対策の手段や女性解放促進の方法と捉えていた。その捉え方を一変させたのがワッセナーの合意であった(アルヤン・カイザー2011)。

1982年「ワッセナーの合意」の成立

「ワッセナーの合意」は、形式的には政府の仲介による使用者側と労働組合側との協定という形になっているが、実質的には政労使三者の合意である。その名称はハーグ郊外のワッセナーという地で締結されたことに由来する。1980年前半の景気低迷の中、オランダ産業の競争力を強め、企業投資を活発化させ、雇用増を図ることを目的とし、労働組合は賃金の抑制に協力する、企業側は雇用確保に努力し、労働時間の短縮を行う、政府は財政支出の抑制に努めて減税を行う、という政労使三者の合意である。アルヤン氏によると、合意そのものは2ページしかない、短いものである。そこでは、「労働時間の短縮、パートタイム労働の導入、若年者の失業率を減らすための取り組みなどいくつかの手段を通じて」、「現在ある雇用をより効率的に再配分」を行うことが必要であると主張すると同時に、「コストの上昇は避けなければならない」とされた。これらの目標達成のために、労使は互いに「独占交渉権を持つ団体交渉のパートナーとして、労働協約で定める賃金協定の再交渉を行う」必要性が唱えられた。さらに、「団体交渉の参加者たちが、互いに自由に交渉できるように、あらゆる手を尽くす」(アルヤン・カイザー2011, 22頁)ことを国会に求めた。企業には、収益力を回復させて失業を減らすこと、賃金抑制と引き換えに従業員全員の労働時間を週40時間から38時間に減らすことが求められた。また合意では、パートタイム雇用は「雇用の再配分を図る手段」の1つとして考えられ、同一労働価値であれば、パートナータイムも正社員も時間当たりの賃金は同じに扱い、さらに社会保障、育児・介護休暇なども同じ条件になった。労働者はフルタイム労働とパートナータイム労働の相互転換を要求できるようにした(紺野
登2011)。

キーワード:ワーク・ファミリー・バランス、オランダ、パートタイム雇用、フレックス労働者、労働法、育児休業制度、保育行政
         
つづく 
A子

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