オランダにおけるワーク・ファミリー・バランス(19 ) 善積京子教授論文抜粋
追手門学院大学・地域創造学部紀要4号
「オランダにおけるワーク・ファミリー・バランス」
2019年3月10日
ライフコース貯蓄制度
ライフコース貯蓄制度は、給与総額の一部を非課税で貯蓄して無給休業中の所得を賄うためのもので、2006 年に休業取得の準備制度として導入された。これには、税制上優遇措置があり、課税前の所得の一部を貯蓄し、後に育児・介護休業など取得時に無収入状態の時に引き出すことができる。
4-2 育児休業制度および家族関連休業制度の利用状況
産前産後・父親休業制度
産前産後休業の使用者側の対応は、まず、パートで働いている従業員に、フルタイムで働く気はないかどうかを尋ねる。フルタイムで働く希望者がいなければ、外部からの採用が検討される。基本的には、すでにいるフルタイム雇用の従業員への分担は行わない。なぜならば、フルタイム雇用の人の仕事量は既にフルだからである。
前述したように、法律では産前と産後を合わせて16 週間の産休が取れ、この間の給料が支払われる。追加で休業を取る場合は、休暇申請が必要で、金額は少なくなるが行政のUWV(労働センター)から給料が支払われる。エラスムス・ロッテムダム大学の教授Dulk 氏によると、親休業の利用状況については研究があるが、出産休業制度の利用状況に関するものはないとのことである。父親休業に関しては、2013 年にはこの取得資格のある父親のうち83% が利用し、さらに6 割の父親は年次有給休暇を使うことで、この休業の日数を延長している(Laura den Dulk2017)。
親休業制度
オランダ統計局によると、2013 年には週12 時間以上勤務で取得資格をもつ女性の57% が平均12 カ月の親休業を取得し、一方、有資格の男性の23% が平均16 カ月の期間に週8 時間の親休業を取っている。親休業は労働時間を短縮して取ることが可能なので、子どもが8 歳になるまでの期間、母親は週平均29 時間、父親は週平均39 時間で働き続ける人も少なくない。
親休業の取得率の年次推移を性別でみると、男性では2003 年の15% から、2017 年には18%、2013 年には23% と増えている。女性では2003 年と2007 年は42% であるが、2013 年には57%に上昇している。親休業の利用率を学歴別にみると、高等教育を受けた女性の間では56%、低学歴の女性では17% で、男性では高学歴者では26%、低学歴者では8% で、高いレベルの教育を受けた従業員の方がその割合が高い。雇用形態別にみると、フルタイム雇用(35 時間以上)の女性では55%、パートタイム雇用(週12 時間から24 時間)で働く女性では30% で、長時間働く女性ほどより親休業を長く利用している。さらに、収入別にみると、高収入(4 万から5 万円)の女性では60%、低収入の女性では31% で、高収入になるほど、育児休業の利用割合が高くなる。法定の最低保障以上の支給の有無は労働協約の合意に基づくが、その協約のある割合は、公的機関やヘルスケアの部門では79%、私的企業部門では25% に留まっている。賃金の75%が雇用主により支給されていることが多い(Laura den Dulk 2017)。
2015 年の調査によると、8 歳以下の子どもをもつ従業員の3 分の1 の人(11 万人)が、必要であるにも関わらず親休業を利用していない。その理由として、「支給金額の不足」(32%)、「キャリアへの影響」(27%)、「制度を知らなかった」(11%)など、あげられている(CBS, Stat-Line)。
つづく A子
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