在蘭邦人相談窓口のブログ

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サンタは父の思い出

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2021年12月 高橋眞知子 演奏家

ご覧の写真は、父がワタシの幼い頃にプレゼントしてくれたクリスマス・デコレーションのひとつです。米国製で背丈10センチほどの小さなものです。おそらくクリスマス・ツリーの足元にでも飾るのでしょう。1950年当初といえば、日本が戦後の混沌から立て直しを始めたちょうどそんな時代で、両親は住まいが不安定でした。海岸の浜で父と一緒にいる記憶、これはきっと鎌倉のものです。実際に鎌倉市材木座に住んでいたようです。そのあとは東京・麻布で長屋住まいになりました。しかしその父ですが、流行り病の肺結核を患って歳若くして亡くなってしまいました。ひとり娘のワタシは4歳でしたが、同じように肺結核と診断され、半年ものあいだ東京の清瀬にある結核療養所の子供専用病棟で暮らすことになるのです。

この2体のサンタの顔は手描きで味があります。愛嬌たっぷりです。当時の米国の雰囲気さえ漂ってくるような。そんなわけでクリスマスといえば、これらを取り出し並べて楽しむのが習慣になりました。父の思い出なのです。

話は変わりますが、邦人相談窓口・ブログに寄稿を始めたのは2016年でした。あっという間にもう5年。40回以上の連載になりました。その場の雰囲気でゆらゆらと自由奔放に、日常のエピソード、社会のトピックス、オランダの慣習、伝統や歴史、人物や著書の紹介、他国での経験談もあれば食べ物の話まで書いてきました。題材は常に心がけていますがその時勢の雰囲気に少なからず左右されるものです。特に昨今、世情は無視できるようなものではありません。先の見えない社会の混迷に戸惑いを覚えるのはワタシだけではないでしょう。人類が今まで経験したことのない局面にあるとも感じます。

昔ある時、とてもエレガントなフランス人の中年夫人と知り合いました。彼女はなんと電気製品をほとんど使わぬ暮らしをしていました。田舎住まいであってもこれは極めて稀なことでしょうが、パリの大都会に住み活動的に仕事をこなすキャリアウーマンでした。冷蔵庫さえ持っていませんでした。ワタシはこれを知って痛く感銘を受けたものです。

人が人としての尊厳を最大限に活かすには、慣れ親しんできたこの便利な生活、言い換えて、便利を盲目的に優先する生活は不調和なものであり、その反動が健康面にも精神面にも現れています。便利を与えられて人は動かなくなります。今日に至ってはさらに明瞭で、戸外でも乗り物のなかでもずっと下を向いている老若男女のなんと多いこと。言わずもがなの携帯です。窓の外の景観どころかものを観る(!)ことさえしなくなりました。デジタルの時代です。これによって支えられています。デジタルの全てを否定するのではなく考慮しましょうということです。なぜなら依存することで「思考」は著しく低下し、モーションを失い、その結果途絶えます。物事を咀嚼し「思考」することは人間の生命線だったはずですがそれを失いつつあります。

ワタシの父には米軍兵の友人らがいたようです。背景は知り得ませんが、誰とでも付き合いが上手な父だったとか。車を借りることもありました。大型で黒い米国車の後方座席に小さなワタシをちょこんと乗せて父は得意げに、それもなぜか皇居の周りを好んで巡ったものでした。
このサンタは、キラキラ輝くガラス玉やモールなどと一緒に、友人仲間が父に譲ったものだったかもしれません。

今年も残すところあと少し。今までご協力下さった在蘭邦人相談窓口スタッフのみなさん、この5年という時間はひとつの区切りと再スタートかもしれませんが、まずは心から御礼申し上げます。
そして皆様、良い年末を。何はともあれ素敵なお正月を迎えましょう。


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