在蘭邦人相談窓口のブログ

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オランダにおけるワーク・ファミリー・バランス(4)

 [オランダにおけるワーク・ファミリー・バランス]について、以前より研究を続けておられる日本研究グループの先生が研究成果を最近纏められました。

大変に興味深いオランダならではの状況が多く出てきます。許可を得て部分的に抽出、又は全文を、皆様と本Blogで共有しています。以下、善積京子教授の論文の抜粋です。

1-2.多様なグループが交わらず共存する多元主義社会
 オランダは、17世紀にスペインから独立した分権国家で、絶対君主制の時代がない。君主を置かない共和政体を採用し、強力な常備軍や官僚制度をもつこともなく、現在も政権は一党だけでは樹立されず、常に連立政権である。オランダでは、多様な・マイナー文化が受け入れられ、1960年代にはアムステルダムは世界のヒッピーのたまり場になっていた。世界初の同性婚を認めた国であり、ゲイ・レズビアン(同性愛者)にとって居心地よい場所となっている。この節では、こうしたオランダの多元主義社会がいかに形成されてきたかを紐解いていこう。

独立戦争、ネーデルランド連邦共和国の成立
 ネーデルランド北部はカルヴァン派が多数を占め、カトリックを強制する宗主国スペイン(ハプスブルグ家)との間で1568年にオランダ独立戦争が勃発した。背景には、これまでの重税政策に対する反発があり、革命の中心になったのは貴族やブルジョア(裕福な中産階級市民層)であった。80年戦争の後の1648年に独立が承認された。
 ネーデルランド連邦共和国では、徴税業務は入札で落札した市民に委託され、徴税に専念する国家官僚制は作られなかった。商工業者や都市貴族は、商業活動の自由を優先させ、都市経済に介入する危険のある王権や中央官僚制の出現を徹底して回避した。経済自由を優先する環境のもとで、17世紀のオランダは貿易の中継地として栄えたばかりか、海運業・毛織物・金融業などでも、圧倒的な競争力を誇るようになった。そして、宗教的・民族的マイノリティに対する政治的・宗教的な抑圧は弱く、多様な民族・人材が集まって市民的な文化の花を咲かせた(水島治郎2011)。

「柱状社会」の形成

 オランダでは1960年代まで、プロテスタント・カトリックという宗派別と、社会民主主義や自由主義派などの政治信条別に、それぞれが全く別の社会グループを形成していた。グループごとに、幼稚園・学校・病院・保険・スポーツ団体・文化団体・婦人連盟・政党・労働組合・経営者団体・新聞・放送局・小売店・カフェなどがあり、人々の生活が各々のグループの中で編成された。組織の支持者や商店の顧客などはグループの中で結び付いていった。

 1つ1つ分割された縦割り構造の社会を「柱」と表現し、宗派別・イデオロギー別に分離した社会をオランダ語では「フェルザウリン(verzuiling)=柱」社会と呼び、日本語では「柱状社会(ピラー・ソサエティ)」と訳されている(長坂寿久2000)。

 この柱状社会は、19世紀末以降、産業化の進行で階級対立が深刻化し、自由主義が台頭する過程で形成された。近代化により伝統社会の規範が緩んで行く中で、宗教各派は信者を近代化の「悪影響」から守るべく、独自の組織化を行う必要に迫られていった。政治に参加し始めたカルヴァン派やカトリック勢力は、階級協調的キリスト教社会観を背景に、社会の各層を横断的に組織化していった。

当初、社会主義派は柱状化に反対していたが、キリスト教系の「柱」が独自の労働組合や経営者団体を組織化し勢力を増大するのに成功すると、彼らも促進せざるを得なくなった。労働組合を通じて、日常生活から政治に至るまで、労働組合の諸組織のネットワークの中で労働者が生活できるように「柱」を作り上げていった。

1970年代まで、5つの主要政党が存在し(カルヴァン派:反革同盟・キリスト教歴史連合、カトリック派:カトリック国民党、自由主義:自由民主国民党、社会主義派:労働党)、労働組合も4つに分かれていた。学校も初等から高等学校まで分かれており、個々人の柱内への意識を育み、友人関係・結婚・就職などでも強力な「規範」となる。 
キーワード:ワーク・ファミリー・バランス、オランダ、パートタイム雇用、フレックス労働者、労働法、育児休業制度、保育行政                  
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つづく

A子

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