「へたばるまいぞ」は、私たち窓口の支援者の一人であるフルート演奏家・高橋眞知子さんによる、実話に基づく物語です。
シリーズ化してブログでご紹介いたします。
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へたばるまいぞ(1)
フルート演奏家・高橋眞知子 2016年10月
玄関のチャイムが鳴っているらしかった。
脳みそも身体中の筋肉も悲鳴を上げたから、おっととばかり手近にあった大判のダンボール紙を裸の床に素早く広げ、倒れこんだ。
あとは何も分からなくなった。気を失うというより,私の周りから時間が消滅した。
施設にお世話になっていた高齢の母が亡くなり、東京郊外の八王子の母宅、小高く見晴らし良い小さな庭付きの一軒家にはもう誰も住む者がいなくなってしまった。
主人を失った家は外から見ても中から見ても寂しげなものである。
亡くなった母に生きている娘がうらめしいなど唱えれば、そりゃ逆だろうとおっしゃる方もいる。
しかし始末というものがこんな一大事だったとは。
へとへとである。
もう少し考えて欲しかったなあ。
昔の人は物を捨てないと言われるまさにそれ。
1階から2階の上の屋根裏まで物そして物。
それが何かって。
大きなものはシュタインウェイのグランドピアノだ。
これは彼女お宝中のお宝だった。
この楽器のために彼女は80歳の高齢にもかかわらず家を建てかえたのだから。
家具、楽譜に書籍、あとは煩わしいから書かない。
チビけた鉛筆や錆びた縫い針に生米粒まで。
その膨大な物の山はただ崩しては捨て崩しては捨てと機械作業ができないのはご存知の通り、その隙間に何が隠れているかわからんからである。
この1年半ほどはオランダから、それ以前は仕事場のあった沖縄から、年月かけて何十回足を運んだことやら。
いや待て、5年間近くこれをしていたので40回くらいにはなるだろう。我ながらよくやった。
感無量。
片付けは終わったなど、まだ夢の中の出来事のようだ。
(つづく)
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