オランダの個別教育はなぜ成功したのか イエナプラン教育に学ぶ
- 作者: リヒテルズ直子
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2006/09/07
- メディア: 単行本
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この本は、オランダが取り組んでいる個別教育と、そのモデルとなっているイエナプラン教育について書かれています。
イエナプラン教育では、学校を、知識や技能の伝達の場ではなく、子どもがそれらの知識、技能を使って、社会に自立的、積極的に参加していくための社会的な能力、すなわち人間関係の築き方について学ぶ場、として捉えています。
子どもが自発的に学ぶこと、共同性を重視していて、教師は支援に徹します。
科目別ではなく、異なる型(学習、遊び、サークル対話、催し)の活動を循環する時間割で授業が進められます。
授業では、年齢の違う子供同士の教えあいの機会が設けられています。
理科や社会科は、ワールドオリエンテーションと言う総合教育プログラムで行われます。
私の小学生のときには「たてわり活動」があり、異なる学年で遊んだりした記憶がありますが、あれが授業でも取り入れられているとは、すてきですね。
ただ答えを教えられて覚えるだけではなく、それぞれの生徒の個性や学習のスピードに合わせてグループリーダー(「先生」とは呼ばない)が寄り添ってくれるので、恥ずかしい思いをすることなく、きちんと学習できそうです。近くに座っている上級生も、助けてくれます。これなら、苦手だなと思う学習内容はあっても、嫌いにはならなさそうです。
日本式に、全員が前を向いて、一人の大人の言うことをじーっと聞くことは、効率的な教育方法かもしれませんが、それが子どもの発育にどのくらい貢献しているのかは、たしかに疑問です。
逆に、自分より少し年上の生徒から教わったり、それを今度は自分が少し年下の生徒に教えるということは、そのプロセス自体に大きな意味があり、知識を得ることに加えて、自分以外の人との人間関係を築くことを学ぶ場になっているのですね。
カラフルで教材がいっぱい詰まった教室、自分のスピードで何度でも教えてもらえる環境、教科を飛び越えた総合的な学び・・・。
私は日本での画一的な教育で育ったので、このイエナプラン教育は、読めば読むほど夢のようなすばらしい教育に思えます。
特筆すべきは、オランダでもかつては一斉教育が行われていた、という点です。
そして、「このままではいけない」という危機感と反省をもとに、イエナプラン教育を実行に移した点です。
オランダ人の、固定概念にとらわれず、いいものはどんどん取り入れようとする自由で合理的な考え方がプラスにはたらいた、と言えるのかもしれませんが、それが第二次大戦中に占領されて大嫌いだったドイツの教育方針だとしても、取り入れて実行したところに、オランダの教育への本気で取り組む姿を見た気がします。
日本でも、やろうと思えばできるのですよね。そう、やろうと思えば。
・・・個人的には、これを日本の文科省の職員向け課題図書にしてはどうかと思うほどです。
そして、教育の「再生」などという時代錯誤ではなく、大きな教育の「改革」に活用してもらえないかな、と切に思います。
I子